この記事は これから外資系に転職しようかと考えている人、社内の昇格・昇進条件にTOEICスコアが設定されている人のご参考になればと思って書きました。
外資系企業の採用面接でTOEICのスコアを聞かれることはあまりありません。すでに英語で仕事ができることが大前提だからです。「資格」よりも英語環境の中での仕事の実績ベースで採否を判断します。
ある程度のスコアが取れたら受験勉強を続けるより、早く英語の実務を手に入れて仕事の実績をあげることをお勧めします。
目次
外資系の採用面接でTOEIC®のスコアは聞かれない
外資系への転職活動をする際に採用面接で聞かれないのは、応募してくるからには英語が話せてあたりまえ。という考えがあります。語学ができるかどうかは「英文職務経歴書」の最後の方に
Languages:
Japanese (Native)
English (Business Level)
Chinese (Fluent)
と、書く程度です。あ、でも必ず書きましょう。参考程度には見られますし、書いてないと職務経歴書の必要要素を知らないと思われるかもしれないからです。
英語で仕事ができる応募者という前提で面接に呼びますから仕事そのものの実績に重点を置きます。
英語で仕事ができるというのは特別なスキルということではなく、パソコンでメールや作業ができるのと同じくらい当たり前なのです。
TOEIC®スコアを聞かなくても今までの実績を英語面接という手段で聞くこともあります。その人の今までの実績とともに英語力もおのずとその場でわかります。
私は20代後半で英語を身に付けるために英語学校に転職しました。その後、アメリカの証券会社に応募して採用されました。
その際は初めから英語での面接。そしてタイピングの測定で1分当たり何語タイプできるか(WPM=Word Per Minute)を測定しました。外資系証券会社でしたが、本物のクラシックなタイプライターを使いました。多分今ではないでしょう。
外資系で採用業務をしていて、英語力は会って話を聞けばわかるので英語力のものについて質問をすることはありませんでした。
「評価」には3種類ある
「評価」には大まかにわけて3種類あります。
一つ目がアセスメント。
アセスメントとは「未経験のことについて(ここでは英語をつかった実務)を代替手段によって事前に今後の実績を予測すること」。英語での実務未経験の人が英語で仕事が出来そうか予測するためにTOEIC®で実務の英語力を「推測」します。
2つめは能力テスト。
能力テストは測ろうとする能力を直接測ります。
例えば学校の中間テストや期末テストでは「その学期の履修内容の理解度」を測ります。
そのとき「その学期の履修内容の理解度」を測る設問になっているかどうかが重要で、設問が妥当かどうかをValidity (妥当性)と言います。
たとえばバイリンガルセクレタリーを採用するときに100m走のタイムは測りませんよね。
3つ目は「業績評価」です。
英語で言うところのEvaluation, Appraisalのことで、すでに挙げた実績を判定することです。仕事の実績を振り返って評価することをPerformance Appraisal(業績評価)と呼び、前出のアセスメントや能力テストとは異なります。
ご参考までに評価制度が整った会社の場合、外資・日系を問わず、業績評価の面接では初めに評価される本人が自己評価を申告します。その際にはその根拠となる資料(主に目標に対する達成度を示す数字)を添付します。
日本企業がTOEIC®の目標スコアを設定する本来の理由
多くの日本企業でTOEICスコアに基準を設けているところが多くなりましたね。その結果、社内ではTOEIC®のスコアが重視されています。
例えば;
管理職の昇格審査を受けるにはTOEIC730点。おそらくハローワークで英語上級者として求職登録するレベルを参考にしているのかもしれません。一般職は600点が目標ということが多いです。
それはなぜか?というと、今まで実際に英語で仕事をした経験のある人が少ないからではないでしょうか?
実務経験があるのが当たり前であれば、わざわざテストを受ける必要がないからです。
実務経験がないのでこれから先、英語で実務を担当することが出来そうかどうか?をアセスするのがTOEIC®の位置づけです。
今までは日本に拠点のある外資系企業でも、多くの職種の顧客や、取引先が日本人であることが多く、英語ができなくても成績を上げられました。
ところが昨今、日本でもグローバル化が急速に進み管理職でなくても英語で仕事をする機会が増えて来ました。インターネットを使ったWeb会議の浸透も理由のひとつです。
そうなると今まで英語が要らなかった営業職の場合でも、自社の海外の営業部隊、お取引先とパソコンの画面越しに英語を使ってのやりとりが増えました。
TOEIC®スコア≠英語の実務力
従来TOEIC®はセスメントとして使われていました。ところが多くの企業がTOEIC®を昇進・昇格基準や海外駐在の資格要件として設定した結果、アセスメントではなく「英語力テスト」という位置づけに変ってしまったように思います。
別の言い方をすると「TOEIC®=英語で仕事をする能力の一部」だったはずなのに「TOEICの点数が高ければ英語での実務能力も高い」という誤解が生まれているのではないでしょうか?
コロナ禍の前から、私のところには「3か月後にNY駐在になるので話せるようにしてください」とか「TOEIC®は950点ですが英語で実務経験がないのにヨーロッパの法務担当になったのでメールが書けるようにしてください」という方がご相談に見えました。
その方たちは「TOEIC®の点数が高い」ので「英語で仕事ができるはず」と思われている。でも本人にしてみれば「英語で仕事をしたことがない」うえに「今更、英語で仕事をしたことがないとは言い出せない」という状況でした。
まさにTOEIC®のスコア=英語での実務能力という誤解が産んだ被害者と言っていいかもしれません。
TOEIC®という英語実務への切符を手にいれた後は実務力を磨く
海外との仕事の担当者を決めるとき、もし仕事の評価が同じくらいの候補者が2人いれば、会社は英語力の高い人を選びます。
ということは英語で仕事をしたければ、その資格要件であるTOEIC®のスコアを取れば日系企業にいても英語の実務経験を積むチャンスはたくさんあります。
実務経験ができるようになれば英語学習はテキストの問題を解くよりも、「話す、書く」のアウトプット系の練習に切り替えることをお勧めします。
その過程で自然と「聞く・書く」も必要となり、インプット→ 実務で使うというサイクルが生まれますので、自分で試行錯誤を経てだんだんと出来るようになります。
まとめ
今回私がお伝えしたかったのは以下の3点です。
- TOEICのスコア基準を満たすのは「海外との仕事に選ばれるため」と割切って取組む
- スコアをクリアしたら英語の実務を手に入れて「英語の仕事の実績」を作る。TOEIC®の勉強はやめてしまってもいいくらい。
- その代わり実際に使う単語を増やして「話す・書く」を大いに伸ばしましょう。