英語が変われば仕事も変わる  製薬業界が得意です (月曜休)

ビジネス英語で学生英語は使わない

1991年春のことです。

初めての海外出張に行きました。自分が仕事をしている多国籍企業のプロダクトフェアに参加するためで行き先はアメリカ、シカゴのクリスタルレイク。

いま振返ると気楽なグループ出張でした。

医療機器の動きの説明を寝ないで考える

当時私は研究開発部門(Research and Development)の部門長のバイリンガルセクレタリーをしていました。

現地でブースに展示される医療機器についてその場で担当者が説明するのを通訳するのが同行の目的。

機械関連の説明では部品の動き方によって動詞を選ばないと、先方にイメージが伝わりません。

ぴったりくる単語を選ぶために、にわか通訳の私は行きの飛行機の中で両側を開発担当者に挟まれてお勉強です。一睡もせず。

この時に覚えた単語でなぜか印象深いのが Latch (動詞)ふたをきっちり閉める、掛け金をかける という単語です。

その医療機器の動きについて説明を受けていたら、蓋を閉める際に close ではなく、shut でもなくその時持参していた分厚い英英辞典によればどうやら

Latch のイメージがぴったり。製品開発担当者の話を聞きながら部品の動きの説明を聞いて

普段知らない医療機器の動き関連の単語を成田からシカゴのオヘア空港に着くまでの間にいくつも覚えました。

そういうときに覚えた単語は両側に座って熱心に説明をしてくれるかたの話しぶりとともに、20数年経っても忘れないことに正直おどろきます。

 

 

オヘア空港で聞いた店員さんの英語にびっくり

5日間をシカゴ郊外のプロダクトフェア会場で過ごし、無事に通訳というお勤めを終えました。

帰りの飛行機を空港で待ちながらお土産を物色していると

アフリカ系のお姉さんがお盆に売り物のお菓子を一口大に切ったものを乗せて近づいてきました。

Wanna try? ウァナトゥライ?
(食べてみたい?)

と声をかけられた私は鳩が豆鉄砲を食らったよう。

これも英語?というのが正直な感想です。

それにもし日本なら「お試しになりませんか?」くらいに丁寧に話しかけるでしょう。

 

前まで医療機器の説明を割とフォーマルな英単語を使いながらしてたのと、ブースに説明を聞きに来る世界各国の同僚たちの英語も

省略が少なく、聴き取りやすいいわゆる共通語としてのビジネス英語。

それが帰りの空港でお仕事中のお姉さんが潜在顧客に向かって

Wanna try? ウァナトゥライ?
(食べてみたい?)

ってなぜ?????と実は少し動揺しました。

失礼だとは思わないけれど、今まで知らない世界の英語にカルチャーショックを受けたのは確かです。

 

かっこいいと思っていた省略形は使わない

今になって振り返ると、自分が中学・高校時代に毎日どっぷり浸っていた洋楽を歌いながら

want to → wanna

going to → gonna

と真似して省略形の発音をかっこいい と思って真似していました。

でも現実はそうじゃなかった。

 

wanna, gonna は仕事の場面では出てこない。

使えるのはお土産のお菓子の試食シーンのようなカジュアルな場面設定。

まだ英語で仕事をするようになって日が浅いころに気づいてよかったです。

学生さんが wanna, gonna, He is like…(He says のような意味)

とおしゃべりして盛り上がっているのは聞いていて微笑ましいです。若いね!って思います。

でも社会人になったらビジネス英語らしいフォーマリティに切り替えないと教育を受けたビジネスパーソンとして相手に信頼してもらえません。

私たち日本人は英語圏、たとえばアメリカは自由平等の国、人間の上下関係を超えてフランクに話し合えるという印象を持ちがちです。

でも実際には発言者の学歴や肩書が尊重される。上下関係は歴然とあります。

どんな意見でも一度は耳を傾けるのが「よい上司」ですが、決定権は上司にある。

一度正式に決まったことは覆らない。

また、Medical Doctor (医者)や PhD(博士号取得者)は仕事上で親しくなっても通常 Doctor を名字の前に付けて呼びます。

そして仕事で使う英語は基本、日本語で言うところの敬語です。

上司が部下に対して「おまえはなあ、」と上から話す ということさえありません。

Could you ~ ? ~することはできますか?

Would you ~ ? ~してくれますか?(やる気があるかどうか気持ちを聞いている)

が標準です。

 

失礼な英単語を避けるには?

 

たとえば上司が自分のグループのメンバーを集めて話を始める時。

Hi, you guys. (「やあ、みんな」くらいの砕けた表現です)

guys は決して失礼ではありませんが、

会社のキックオフミーティング(年初やプロジェクトの発足会)など正式な場面だと避けたほうがよいです。

Hello, ladies and gentleman. →  こんにちは、皆さん。

というレベルの古風で丁寧な単語で話し始めます。

 

guys を使うのは正式な場所でなく、さらに話し手と聞き手の心理的距離が近い時。

guys がカジュアルな単語かどうかは紙の辞書を引けば 例えば単語の後に[俗]と書いてあります。また逆に仕事でも使えるフォーマルな単語なら[正式]と書かれています。

オンライン辞書だと[俗][正式]の表記が必ずしもあるわけではないので そういうときはスクロールダウンして例文から探ることができますよ。

今までのクライアントさんの中にも

「wanna, gonna ってネイティブみたいでかっこいいですよね?」という方に何人もお会いしてきました。

もちろんお友達と話す分には差し支えありませんが、やはり仕事の場面では夜みんなでディナーに行ったときでも

I wanna

I’m gonna

はお勧めしません。

 

あ、そして最後にもうひとつご参考までに。

アメリカ文化圏の人はお酒の上での失敗には厳しいですから、カジュアルになり過ぎないことはもちろんのこと

振る舞いにも気を付けましょう。

お酒(アルコール)= 薬物なので。

 

 

 

 

 


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