先週12 日金曜、NHKの「あさいち」に指揮者の小澤征爾さんがゲスト出演されていました。
80歳を超えた小澤さんがオーケストラの指揮者としての活動以外に、「命を懸けて」続けていらっしゃる活動の一つが「オペラを通しての若い音楽家たちの育成」です。
オペラは大半の部分が歌手による歌で構成され、歌の伴奏はオーケストラによるものです。
小澤さんがオーケストラの演奏を指導しながら感じていることを語っていらしたのですが、なんとびっくり。
日ごろ私が英語の発声、発音について思っていること、クライアントさんにお勧めしているのとまったく同じ言葉が出てきました。
それは。。。一言一句正確な記憶ではありませんが、おおむねこんな内容です。
スコア(楽譜)では感情のこもり方を表現しきれない
日本の演奏会に足りないのは音楽のノートを超えた感情表現です。よく、スコア(楽譜)を読み込めと言いますがスコアではすべての感情のこもり方を表現しきれないのです。
舞台に登場した人物が今、どんな気持ちでいるかをくみ取ってスコアを超えた感情を音で表現する。
その、タタタタ~ん!っていう感情を楽器で表現するときに日本人は遠慮してしまう。スコアに書いてあることを超えようとしない。
アルファベットでは音と感情は表現しきれない
英語の発音が英語らしくならない人の多くは、書いてあるアルファベットの自分が知っている音から離れようとしません。書いてあることが絶対的な正解の気がして。
本当は自分の前にいる英語スピーカーの発音のほうが現実なのに。
たとえば Experience: 「経験」という名詞を例に挙げる4つの音節に分かれます。
Ex-pe-ri-ence. そしてアクセント(高くなるところ)は二つ目の音節 pe に置くのですが多くの人がここを文字につられて日本語の 「ぺー」と発音するのです。
ところが英語圏では国によって若干の差はあるものの 多くは「ピエ」または「ピー」と発音します。
したがって
日本人に多い発音: エクスペーリエンス
多くの英語圏では: イクスピエリエンス または イクスピーリエンス
さらにこの単語を使って話すときは「経験」についてですからおのずと気持ちがこもるはず。例えば
Let me tell you about my experience.
私の経験について話させてください。
と話すときに「経験を話したい」という気持ちがあれば当然
Let me tell you about my experience.
私の経験について話させてください。
と一番伝えたいところ(太字部分)に日本語で話すときと比べたら、大げさなくらいのアクセントがつく付きます。
それがなかなかできない人が多い。
試験勉強としての英語に感情込める練習をする機会がありませんでしたから(英語劇をやった方は除く)
でも言葉は生もの。
楽器の演奏や、歌を唄うときと同様、話すときには話す人の感情が込められます。
文字は人類が話すようになってからずっと後、紀元前4000年くらいになってようやく発明されました。
とても人間の豊かな感情まですべてを表すことはできないのです。
だから安心して自分の感情を乗せて発話していいのです。そこには試験の答えのように、決められた正解はなくて、話し手であるあなたが正解です。