この記事は仕事で外国人と電話のやり取りをすることがある人向けの記事です。私の失敗談ですのでマネしないでくださいね。もちろん日本語でもダメなものはダメ。
電話が得意でない上司からの無茶ぶり
いまでこそ、個人のクライアントさんや法人、契約先のビジネスパーソンに
英語で仕事をする際に気を付けたいマナーや伝わりやすい言い回しをお伝えしている河野木綿子ですが、
もちろん初めから英語で仕事をスイスイしていたわけではありません。
今思い出しても、夢に見ても
ああああああ~!
と叫びたくなるような事件はたくさんありました。
特に英語圏の映画を見て「カッコいい!いつか真似しよう」と思うようなシーンを
実際にやってしまって大騒ぎを起こしたこともあります。
まだまだ駆け出しのクラーク(事務員)としてアメリカ最大手の証券会社の人事にいたときのこと。
当時の上司はシカゴ大学でMBAを取得して帰国したばかりの H さん。
私よりいくつか年上で同じ大学の出身ということもあり親しみを感じていました。
ところが H さん、おっちょこちょいで、調子がいい。
MBA取ったくらい英語が出来るはずなのに英語を話すのが苦手。
電話なんて勘弁してよ~
という方でした。
となると、「はい、河野さん、お仕事よ!」
と、仕事の最前線にいるアメリカから来たエクスパット(駐在者)のトレーダーに電話をしなければならない仕事を振ってきます。
今でもそうですが、アメリカから来て日本に入国する際、無税で持ち込めるワインの本数は決まっています。
それをこえると課税される。
トレーダーに電話するのは
来月の給料から関税を天引きしますよ、いいですね?
という要件でした。
自分のものなのに日本に持ち込んだら税金がかかる。だれでもありがたくない話の内容です。
私にしても英語で仕事を始めてまだ数年。ただでさえ、戦場のように激しい職場でガンガン仕事しているアメリカ人トレーダーに
「お金、天引きするわよ」
という電話をするのはむちゃくちゃ緊張します。
ストレスフルな最前線にネガティブな内容を伝える
ちなみに強い緊張をともなうトレーダーの仕事
のストレスを解消するために大手センタービルのエレベーターバンクの裏側には
サンドバッグが取り付けてあって、
獣のように雄たけびをあげながらパンチをかましているトレーダーの姿を何回か目撃しました!
それを知っているだけにものすごい緊張感を感じていました。
自分が誰だか名乗ること、ワインの本数制限、天引きする額をメモに書いて握りしめ
プッシュボタンを押すとすぐに本人につながりました。
今なら、相手にとってネガティブなお知らせでも失礼にならず、はっきり伝えるのはお手のものといっていいんですが。
そのころ、そんなスキルはナシ。
無我夢中で要件を説明して金額を言うと案の定、ダダダダっと何か言い返してきました。
ドキドキしているせいか全く聞き取れません。
Excuse me?
と聞き返しても早口の英語でもう一度
ダダダダダダっ!
私、文字通り縮みあがって受話器をガチャンと置いちゃったんです。
それからわずか15分くらいたってから人事のオフィスに1人の白人男性がすっごい勢いで入ってきました。
ここに Yuko というクラークはいるか?
そいつを首にしろ!
わ~、私のことだ。さっきのトレーダーに違いない。
私はそちらに背中を向けて部屋の奥の方に隠れました。
もちろん上司も同僚もかくまってくれて、だれかが適当に言い訳をしてくれたらしく
その日、私がそのトレーダーと対面することもなく首にもなりませんでしたが
いまでもそのトレーダーがややブルーがかったパリパリのワイシャツ(crisp shirtという言い
方をします)を着て部屋に入ってくる様子が目に焼きついています。
映画やドラマのシーンをそのままマネするのは危険
そう、日米を問わずオフィスが舞台になっている映画では、電話をガチャン!と切るシーンってありますよね。
一度、ちょっとスカッとすると思った電話の
ガチャン!
とっくに忘れていたはずのに、相手の言っていることがわからず、パニックに陥ったときついついやってしまった。
相手は烈火のごとく怒り、当時大手センタービルにあったフロントオフィスから神保町のバックオフィス(管理部門)まで怒鳴り込んできた
という事件でした。
1989年。このあと間もなくバブルの崩壊の波が日本にも押し寄せてくる前夜でした。