評価される管理職の英語ビジネスコミュニケーション  製薬業界が得意です (月曜休)

英語のWeb会議で日本の複雑な事情を口頭で伝える

この記事は日本だけ独特な複雑な課題をオンラインで伝えるのが難しくてもどかしい思いをされている方のためのものです。

日本の法律・慣例を説明する責任

私自身、長年多国籍企業で人事の仕事をしてきました。

国内人事だけでなく、諸制度の仕事の手順を世界中で統一する作業、Standardizationを数多く体験しました。

対象となる制度は採用・育成・評価・昇進・サクセッションプランニング(後継者育成)など多岐にわたります。

そしてその多くの制度で世界が標準化しようとしていることと、日本で法律・慣習にそってしていることとの間に大きな溝があることが少なくありませんでした。

他の国々で新規に導入する標準化された制度に日本もできる限り合わせていくためにはこちらの事情を言葉にしてわかりやすく伝える必要があります。

その一例が人員調整に関することです。

たとえば海外の本社はM&Aが終れば一緒になった2つの会社の機能で重複する部門を1社分に縮小します。つまり人員調整です。

海外では人員調整の際に、対象者に手厚い補償(いわゆるパッケージ)をお渡しするだけで円満に退職される方が多いですが、日本の場合は違います。

日本でも抵抗感なく補償を受け取り転職活動を即開始される方もいらっしゃる一方で、多くの方が転職先が決まる前に退職を決意することに躊躇されます。また世間体も気にされます。

さらに最大の壁が日本の雇用に関する法律。
日本の法律は被雇用者の雇用を守ることを大切にしています。被雇用者を雇用し続けるための最大限の努力をしてもポジションが準備できなかったという明確な理由がない限り、退職していただくことは難しい。

無理強いすると労基署への通報があったり、社会問題化してブラック企業のレッテルを張られたり、訴訟問題に発展する可能性もあります。

そうした日本の雇用についての事情をWeb会議で少数派として手を揚げて口頭で説明しないといけない。

“Unfortunately, this scheme has a lot of issues against Japanese labor law. Let us adjust and localize this system”

「あいにくこの計画は日本の労働法に照らしてたくさんの課題があります。
 調整して日本に合うものにさせてください」

といった発言を50ヶ国以上が参加する真夜中のWeb会議で発言する経験は一度ではありませんでした。

何をして欲しいか最初に伝える

複雑な話をするとき、その背景からを説明したくなりますがここでは逆です。

まず何の話をするか大枠を伝えたらそのあとすぐに先方に何をして欲しいかを明確に伝えます。これは英語のプレゼンと同じです。

先程の人員調整の話なら「日本では法律に抵触するので手順に例外を認めて欲しい」ということがメインメッセージです。

その次に日本の法律は被雇用者の雇用を手厚く守るという現状を伝え、それに抵触すると法律違反として会社の評判を著しく落とすことというリスクを伝えます。

なぜなら海外の本社はこの計画を日本に導入した場合に問題があるかどうかについて、私以外の情報源がありません。

グローバル組織の意思決定がなされようとしているその場で私には言葉で伝えて了解をもらうという役割(ここではほぼ責任)があるのです。

それを伝えずに全世界で賛成したから日本でもやらないといけない。となると人事の自分だけでなく、日本のたくさんの社員に理不尽なことを押し付けることになります。

いま伝えるべきことに絞って説明する

担当者(ここでは私)の気持としては主張の妥当性を伝えるために、会議の場で過去の他社事例まであげて説明したいところですが、それは避けます。

なぜならWeb会議中に他国のたくさんの人の時間を日本だけのために使う訳にはいかないからです。ここでは

「法律上(コンプライアンス)まずいのでローカライズさせて欲しい」→「OK!」という

了解がもらえれば充分で、その他の必要なことは会議後に追って会議の主催者に知らせます。

その際、グローバル上部の人達がパッと見てわかるレベルに簡素化してお伝えします。結論 + 説明の箇条書きくらいがよいでしょう。

組織の上部の方々は例外なく多忙なのでメールの最初の3行くらいで、ここから先を読むか、読むのを止めるかを判断されるので長々書くと読んでもらえなくなります。

まとめ

ここで取り上げた例はまだシンプルなケースです。

人事の方で例えば労務問題を扱っている場合は、会社組織の問題、社員間の個人的で感情的な問題などが、法律や健康問題と重なって一言で説明するのが難しいことがままあります。

そんな時には一つ一つの問題について詳しく説明するよりもまず

・先方に何をして欲しいか
(アドバイスが欲しい、トップから力添えして欲しいなど)

・日本の組織で起きていること(客観的な事実)

・本来のあるべき姿(人事としての方針)

・放置した場合のリスク(コンプライアンス)

を整理して伝えます。 日本語で話すとしても、とりとめなくなりがちな複雑な問題の説明は、予め整理して箇条書レベルにシンプルな英語にしておくことをお勧めします。

こちらが先方に対して良かれと思ってする微に入り際に入る日本式の説明は先方から求められたとき以外は必要ありません。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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