共通語としての英語 こだわり過ぎを捨てよう

こんにちは。河野木綿子です。

今から20年前に企業で英語研修の担当をしていたころ、講師を派遣してくれる語学学校の営業担当者から、よくこんな質問を受けました。

「アメリカ人とイギリス人、カナダ人の中からどこの国の講師がいいですか?」

フィリピン人講師がオンライン英会話で活躍している今からは想像がつかないことですが、当時はこの3つの国の英語が英語学習者にとっては「正統派英語」的な存在でした。
それ以外は「訛ってる英語」というイメージがあり、まったく人気がありませんでした。

20年後の今、私のクライアントさんの中でアメリカ、イギリス、カナダの人と英語でやりとりしている方はいません。仕事の相手は大抵がシンガポール、インド、時に韓国。南アフリカやフランスの方もいます。英語はビジネスの標準語として定着しています。
そうなると当然、アクセント(お国訛り)は様々ですし、ローカルな英単語なんていうものも存在します。

仕事の現場の英語は多種多様

英語講師は〇〇人。というこだわりを持つ時代は終わってしまったのかもしれません。
どこの国の英語であれ、主語 + 動詞 + 目的語 の順番は変わりませんし、中学、高校で習ったアメリカやイギリスの発音や英単語と違っても目の前にある英語が今必要な英語です。

シンガポールに出張したとき、現地の方と話していたら「カッパクー」という単語が出てきて、固まったことがあります。「河童を喰う?」私の頭の中には巻き寿司のカッパ巻きが浮かんだのですが、相手が言いたかったのは駐車場。Car park でした。発音がお国訛りというのもありますが、Car parking や Parking lot ではなくてシンガポール独特の言い方のようです。(ご存知の方いらしたら教えてください)
こんなふうに英単語がオリジナルから変化して、その国や地方独自の表現になった英語のことを Pidgin (ピジン)English と言うそうです。

4年前にある日系企業で夜間の英会話コースの初級クラスを担当したことがあります。対象者は英語を話したことがない方たち。その生徒さんの中に大学を1年間休学してアメリカ西海岸でサーフィンをした。という方がいました。その方にとって実際に触れたことがあるネイティブの英語とは California English 。単語の語尾に音の省略や変化がたくさんあります。

たとえば
hold a lot of things の発音は無理してカタカナで表すと
ホーダララシン     に近く聞こえます。

ところが私の発音はイギリス寄りです。子音は割としっかり発音してしまう。
レッスン開始後、初期のころにその旨お断りはしているので、それまで私の発音のことでトラぶったことはなかったのですが。

あるとき私が英語を発話している最中にそのサーファーさんが一言。

「そんなこと言わねえし!」。
と、机ドン! をしました。

いわゆるブチ切れたという感じです。

私も失礼な!とカチンと来たのですが、動揺を抑えながら彼に聞きました。
『そんなこと』 ってどんなことでしょう?」
返ってきた答えは
「California では誰もそんな発音しない。先生のは英語じゃない」

こだわり過ぎて学習機会の喪失はもったいない!

英語のレッスンの時間が気になりましたが、今誤解を解いておかないとこの生徒さんはずっとわだかまりを持ち続けることになると思いました。
「世界にはさまざまな発音の英語がある」という実例をご紹介しました。

フランス人の話す英語の音からは H が抜けることがある。ドイツ人の英語の発音はProject のjeの部分に癖がある。シンガポール人の英語のリズムは独特だ。などなど。

でもその生徒さんは次の回から現れませんでした。残念。。。

英語講師がこんな失敗談をオープンにすることは珍しいかと思います。でもこの話、英語学習者のお役に立てるかもしれないのでご紹介しました。

もちろんアメリカの西海岸の英語の発音が好きで、自分もそういう英語を話したい。というこだわりを持つのはありだと思います。この方の場合、そこまで信念があったとしたらそれはご本人の洗濯ですから、私がとやかく申し上げることはありません。
イギリス英語が好きで「イギリス英語ならこの人」と言われる専門家になったと英語講師の大先輩もいます。

でももし共通語としての英語ができるようになることが自分の英語学習の目的なら、知らないタイプの英語にを初めから拒絶するよりも「へえ~。そういう使い方もあるんだ」と面白がるくらいのほうが世界は広がります。

必要以上のだわりを捨てる。でも辞書で調べる手間は惜しまずに英語のバラエティに触れるのは楽しいですよ。

投稿者プロフィール

河野 木綿子
河野 木綿子
河野木綿子(こうのゆうこ)
仕事の英語パーソナルトレーナー。管理職の英語のお悩みを出張個人レッスンで解決します。
トレーナーはいわゆる純ジャパ育ち。新卒で(株)西友に就職したものの、外資に転職しました。その後大手外資系企業で25年間、仕事の英語を駆使してグループ会社全体のシニアマネージャーへと上り詰めました。英語だけでなく仕事を回すための異文化コミュニケーションのコツもお伝えしています。
主な勤務先;
モルガンスタンレー、バクスター、ファイザー、シーメンス

主な著書;
『仕事の英語 いますぐ話すためのアクション123』すばる舎
『読むだけでTOEIC®テストのスコアが200点上がる本』あさ出版

メディア取材・掲載:プレジデントオンライン掲載記事 外国人上司の苦悩

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