明け方2時まで仕事をしている外資系管理職
私のクライアントさんの一人に日本に本拠地のある外資系企業の管理職の方がいます。彼女は英語の取り組みも熱心で3ヶ月の集中コースの受講中、一日も欠かさず課題を提出してきました。
在宅ワークが当たり前になってから生活に変化が起きたそうです。
毎日、明け方2時まで仕事をして、すぐ寝る。朝は8時半に起きる。
私が「そんなに大変な仕事をしているのに、英語は欠かさずやるなんてすごい!」と正直に褒めたら
「英語が息抜きになってるんですよ。とにかくサクサクこなせ!と自分に言い聞かせてます」 とのこと。
なぜ明け方2時まで仕事をするの?と聞いたところ
「昼間はAPAC*の部下の人たちとずっと One on One**のミーティングをしてるんです。 次からつぎへ。 オンラインになったら会議室間の移動も場所の移動もなくなって、インターバルなしに次から次へとミーティングが入ってるんです
だから自分だけの仕事は夕ご飯の後に始めて終わるのが2時」
注:*APACとは Asia-Pasificの略
**One on Oneとは上司と部下の1対1のミーティング
彼女は当然、英語で仕事をしています。しかも自分が上司の立場でミーティングをリードする。
なぜOne on Oneが増えたのかと言うと、彼女が新しいプロジェクトの責任者になって8人の部下がいるから。
そうなるとアジアに散らばる今まで知らなかった人と多人数のミーテイングがスムーズに行くように人間関係を築く必要があるとのこと。
進捗だけでなく、なにか抱え込んでいないか、家族とはうまくいっているか、そんなことまで聞くそうです。
彼女にとって外国語である英語で、会ったことのない人とオンラインだけで人間関係を築いていく。
コロナ感染拡大の前は大きなプロジェクトならどこかの国に集まってキックオフミーティングを開いたことでしょう。
ディナーも交えて大勢でFace to Faceで過ごして打ち解けてが当たり前でした。
でも移動が制限されている今、すべてがオンライン。
幸い彼女の場合、英語にはあまり不自由がないのですが8人の部下の仕事の進捗までケアしながら自分の仕事が深夜まで。
早く楽になるといいなあと心配しています。
One on Oneで部下を潰す日系組織の上司
さきほどお話した上司は外国語であっても部下のケアを怠らず話をじっくり聞くタイプの上司でした。多くの外資系は管理職に対して「話を聞いて部下の考えと『何をするか』のコミットメントを引出す」、コーチングスキルのトレーニングを受けます。
自分が何もかもするのではなく、自分が指示を出さなくても自ら考えて動く部下を育てるのがデキる上司。
そして人前では部下を褒める。
ところが全く反対のタイプの上司の話を、ある日系組織の定年前の管理職から聞きました。
組織のトップが昨年変わり、上司と部下のコミュニケーション促進のためにOne on Oneを取り入れたそうです。
ところが管理職層はコーチングのスキルも経験もない。
オンラインで部下が上司に話をすると頭ごなしに否定して「だからお前はダメなんだ」という展開になり勝ちで 部下は意見や提案をしなくなり、
以前より組織風土がギスギスしてきているように感じているそうです。
コミュニケーションと信頼関係
今、メディアでは在宅ワークになってからのコミュニケーションの難しさ、就業時間の長時間化について目にすることがときどきあります。この記事で初めにご紹介した、部下とじっくり向き合う上司。
彼女はまさにコミュニケーションと信頼関係を築こうとしています。
ただしオンラインの職場環境では丁寧なコーチング的手法でのやり取りに時間が掛かります。
どの程度やり取りをするか。 どれくらいの頻度でやり取りをするかのさじ加減をしないと上司の健康が心配です。
一方で(2)で紹介した日系組織の管理職たち。
今まで部下を「オマエ」呼ばわりして、一方的に指示を出すという仕事の仕方をしてきました。
それでも肩をたたいて激励し、夜は飲みにつれていくというコミュニケーションで上下関係は保たれ 仕事は回っていたかもしれません。
それがオンラインのやり取りになっても今まで通り部下の意見を頭ごなしに否定する。
肩をポンっと叩くことも、フォローの「飲みに連れていく」もできなくなった。
と、なると元々、先進国の中で低いと言われてきた日系企業の生産性は更に悪くなるのではないでしょうか。
「オンラインでのコーチングスキル」、必要じゃないですか?
今日全くの偶然なのですが日経新聞の11面に「テレワークの成功の鍵は信頼」(京都大学 若林直樹教授)という記事が出ていましたね。
もしお手元にありましたら、上司の皆さん、ぜひ読んでみてください。思い当たること、勉強になること、あると思います。
今日も最後までお読みいただきありがとうございます。