この記事は英文メールでの頼まれごとを、先方に失礼にならずにお断りできるようになりたいという方のためのものです。
お礼から始める
今では日本の生活様式が20年前、30年前より外国の人たちにも知られるようになりました。日本の文化に関心をもつ人も増えました。
でも私がバイリンガルセクレタリーをしていたころはとんでもないリクエストのメールを受け取ることがありました。例えば1月の3日に研究グループメンバーで日本を訪れたい。クリスマスシーズンも明けて状況が落ち着いたから。ついては関係部署の人たちとも交流の場を持ちたい。
今だったらさっさとお断りのメールを書けるのですが、当時は「無下に断って人間関係がうまく行かなくなったらどうしよう。。。」と悩んで英文メールの例文集と首っ引きでお返事を書いたものです。今それを読んだら例文を寄せ集めて書いた、文章のトーンがばらばらな赤面ものもメールだったことでしょう。
さて、どうやったら失礼なく、人間関係にヒビを入れることなくお断りのメールを書けるかと言うと「お礼から始める」というワザがあります。もちろん、これがたった一つの正解と言う訳ではありませんが、都合の悪い時期を外してもらいたいときには便利です。
先ほどのお正月三が日のうちに日本を訪問したい。というリクエストなら
”日本チームのことを考えてくれてありがとう。関係部署の人たちもそれを知ったら皆さんを歓迎することでしょう。
Thank you for considering Japan team. I am sure the relative departments will be welcoming you as well. ”
これから「お断り」することになるけれど、その前に相手の気持をほぐすために、相手に対する感謝を伝えます。
相手の主張を一度受けとめる
返事を読む相手の気持がほぐれたところで相手の考えていることが、正確にこちらに伝わっています、ということを伝えます。こうすることで情報のやり取りはしっかりできている、と相手は更に安心します。相手が書いてきたことをそのままオウム返しでよいのです。
”I understand that your team would like to visit us January 3rd onwards.
あなたのチームが1月3日から私たちを訪問したいという言ですね”
クッション言葉の後に「お断り」をきっぱり伝える
通常、英語のコミュニケーションのテキストには「英語は結論から」と書いてあります。それは日ごろのやり取りでは正しいのです。でもお断りの時は相手にとって嬉しくないメッセージを伝えるので、相手が気分を害さないような気配りが必要なのは日本語と同じです。そのために結論の前にクッション言葉を使います。
”Unfortunately, early January is not the best timing to do so.
残念ながら、1月初旬は訪問にはベストなタイミングではありません”
ここではUnfortunately 「残念ながら」というクッション言葉を使いました。
クッション言葉はほかにも”I regret to tell you that”などいくつかあります。
他に;
”I regret to tell you that
申し上げにくいのですが”
も使いやすいですね。そのあとにズバリ「ベストなタイミングではない」と伝えます。ここで
”We cannot do so”
私たちにはできません
としてしまうとcannotには主観的なニュアンスがあります。大げさに言うと「できな~い!」という感じです。さらに
”It’s impossible
不可能です”
というのも客観的な事実を伝えるので文法的に間違いではありませんが、個人的には拒絶感が強くて私なら使うのをためらいます。
代わりに時期のせいにして「タイミングがベストでない」と伝えれば、相手は「ではいいのはいつだろう?」と代案に興味を持つことでしょう。
お断りの理由を伝える
相手の気持がリクエストから離れて聞く耳をもったところで、お断りするからにはその理由を伝えましょう。例えば;
”New year’s holiday is an important season for Japanese people. Most of people stay with their families, seeing old friends like you do during Christmas season.
日本人にとってはお正月休みは大切な季節です。ほとんどの人が家族と過ごしたり古い友人と会ったりします。ちょうどあなた方がクリスマスシーズンにするように”
どうでしょう。この例えなら、キリスト教文化圏の人にはピンと来ますよね。
先方が「なるほど、そうなのか」と納得してくれたところで、今度は代案とそれをすることによる相手のメリットになることを伝えます。
お断りしっぱなしだと相手は「あ、そうなの」と思ってはくれても、どうしたら日本に来られるかという情報がありません。
代案と相手にとってのメリットを伝える
代わりに、1月中旬以降を提案して、そうすることによる相手のメリットを伝えます。メリットを伝えると相手の心が嬉しいほうに動くので、こちらの提案を受け入れやすくなります。
”Instead, how about mid-January? Our side comes back to normal work pace to spend enough time with your team.
Maybe we can enjoy nice Washoku after the meetings during the daytime.
代わりに、1月中旬はいかがですか?こちらも仕事が普段のペースにもどって
皆さんと充分な時間を過ごせます”
昼間の会議が終ったら美味しい和食をご一緒できるでしょう”
この例では、1月中旬という「代案」を伝えてから「時間が充分取れる」「会議の後は美味しい和食を食べましょう」という相手にとってのメリットを提案しています。
英語はロジカルな言語とは言われますが、結論→理由だけだと理解はしてもらえても、相手の心を動かせないこともあります。
「頭ではわかるけど、なかイラっとする」という気持ちを持たせないように、相手の感情への配慮が出来れば、お願いごとのお断りも気が重くならずにできます。
最後までお読みいただきありがとうございます。